銅鍋の中で少しずつとろみを増していく「いちごの生キャラメル」。焦げないよう温度に細心の注意を払いながら、丹精込めて作り上げていきます。

伊達なわたり活き生き大賞でグランプリに輝いた渡部菓子店の渡部安弘さんは、いちごの生キャラメルを形作るまでに「多くの時間と労力を使い、何度も失敗を繰り返しながらやっと完成した」と振り返ります。生キャラメルにイチゴを加えると分離したり、水分の違いで全く違う出来栄えになってしまうからなのだそうです。

 

 

 

 

 

菓子作りへのこだわり

洋菓子店らしい甘い香りが漂う店内、明るいショーケースには色鮮やかなスイーツが並び、パンやドーナッツなど、商品の多さに目移りしてしまいます。

渡部菓子店は、安弘さんの父安記さんが昭和32年に開業しました。当時は和菓子が中心で、今では見る機会が薄れてしまった葬式饅頭なども作っていました。この頃は、洋菓子店がな時代でしたので、クリスマスにはケーキも作っていたそうです。

そんなお父さんの姿を小さな頃から見て育った安弘さんは、菓子作りの道を選択し、講習会に参加するなどして、必死に技術を磨いていきました。そして平成元年、菓子店を受け継ぎ、有限会社渡部菓子店として、新たな一歩を踏み出しました。

店の奥にある工場をのぞくと、背の高い帽子、清潔感ある白いユニホーム姿の安弘さんが、注文のケーキ作りに追われていました。

妻恵子さんと娘夫婦など六人が分担して、ひとつ一つの工程を丁寧に素早くこなしていきます。

お菓子は生き物と同じで、常に変化していきます。製造する時間、温度などによって出来栄えが変わってくるため、工場内の温度管理、衛生面に気を配りながら、小さな菓子に命を吹き込んでいきます。

安弘さんは、菓子業界の流れを読みながら、常に新しい商品や新しい素材を取り入れつつ、過去の商品、古き時代の商品を含めて季節感を出すことができる商品づくりにこだわっています。

工場から聞こえる産声

11年目を迎えた伊達なわたり活き生き大賞。第1回から出品し続けている渡部菓子店は、今回のグランプリをはじめ優秀デザイン賞や奨励賞などの入賞を果たしています。その喜びに加えて、出品するようになってから、新しい商品や人気商品の創作意欲が湧いてくるようになったそうです。「いちごの菓子作りを中心にいろいろなお菓子が次々に作れるようになったことがとてもうれしい」と安弘さんが話すように、1年後、また新たな商品が産声を上げるに違いありません。

工場で一緒に働く娘のひとみさんは、「小さい頃から父を尊敬しています。その影響か小学生のころはケーキ屋さんになることが夢でした」と話し、「これからも、(わたしたちが作る菓子を)みんなに食べてもらい、誰からも愛されるようなお店にしていきたいと思っています」と語っていました。

工場では、恵子さんをはじめ、ひとみさんの夫康児さんも大事な役割を担っています。家族が力を合わせ、お店を盛り上げていこうという強い気持ちが取材を通して感じることができ、それが安弘さんの創作意欲をさらに掻き立てているのだと思いました。

お客さんを幸せにしたい

安弘さんの長男大典さんは、東京の有名洋菓子店で修行をしています。数年後息子が亘理に戻ってきたときには、店を大きくしたいという希望を抱いています。そして、「誰からも愛されるお菓子を作り、お客様を心の底から幸せにするお店にしていきたい」と安弘さんは願っています。パン屋さん・ケーキ屋さんは、日本中の多くの子どもたちが夢に抱く憧れの職業です。とはいえ、朝早くから夜遅くまで働かなくてはならない大変な仕事でもあります。工場の一角に、孫の里都ちゃん用のベビーベッドがあり、みんなで協力して子育てをしてます。

里都ちゃんは、ベッドやお父さんの背中から、いつも忙しそうに働く姿を見ては、笑顔を振りまき、仕事の疲れを癒してくれます。大きくなったら、きっとこの工場でみんなに愛されるお菓子を作っていることでしょう。お母さんやおじいちゃんのように・・・。

 

Date

渡部安弘(わたなべ・やすひろ)
昭和31年亘理町南町生まれ。
大学卒業後、父安記さんのもとで菓子職人としての技術を学ぶ。

(有)渡部菓子店
  • 宮城県亘理郡亘理町字南町15-4
  • TEL 0223-34-1530

 

(広報わたり 平成22年1月号掲載)