悠里館から東に歩いて5分ほどの住宅地に、佐藤美津子さんが経営する「工房あえり」があります。ここでは、米粉パンやお菓子、ジャムなどを製造し、「おおくまふれあいセンター」と「鳥の海ふれあい市場」で販売しています。

美津子さんが作る米粉パンは、ほぼ半日で売り切れるほどの人気で、仙台や名取などから買いに来る人もいるそうです。ふれあい市場に来店した仙台市の男性は「春先にたまたまパンを買ったら美味しくて、それ以来週に一度は買いに来ています」と話します。

 

工房を作るきっかけ

美津子さんは料理が好きで、かわいい孫に添加物の入っていないものを食べさせようと人参を煮てつぶし、砂糖を入れてジャムのようにパンに塗ったりヨーグルトに入れたりして食べさせていました。孫たちにも好評だったので、知人にもジャムを振る舞ったところ、「こんなに美味しいんだから、活き生き大賞(商品開発コンクール)に応募してみたら」と薦められ、出品してみることにしました。

平成16年12月、伊達なわたり活き生き大賞の審査会には、商品開発のエキスパートや農水産加工に精通する審査員がずらりと並び、緊張しながらジャムの説明を夢中でしました。

そのとき、ある審査員から「これを商品化してみませんか」と言われ、許可を受けた農産加工施設で作ったものは販売できることを知り、「売ってみよう」と思いました。

販売するからにはきちんとしたものを作らなければならないと試行錯誤し、翌年の7月7日、「工房あえり」の名前で「キャロットジャム」の販売を開始しました。

 

お父さんと調理場の建築

この頃美津子さんは、孫の子守をしながら、その合間を縫って製造をしていましたが、農産加工場は共同であったため時間の調整が難しく、自分の加工場を持ちたいと考えていました。

お父さん(夫の孝夫さん)にこの気持ちを打ち明けお願いをしましたが、首を縦に振ってもらえず、何度も何度もお願いしたそうです。姉や弟の後押しもあり、半年後、ようやく孝夫さんから理解してもらえました。

このときのことを孝夫さんは、「趣味とは違う、衛生の面など商売はあまくない、簡単なものではないと、とても心配していた」と話していました。

しばらくして、働く婦人の家のパンづくり教室に通いはじめた美津子さんは、自宅でパンを焼いてみようと材料を買いに行った店で、偶然米粉を見つけました。「パンが作れるのかしら」と一袋だけ買って作ってみると、孫やパン教室の人たちにも受けたことから、ひとくちサイズの米粉パンを販売してみました。結果は、ほとんど売れなかったそうです。

そんなとき、東北農政局主催の米粉を使った料理教室があることを知り、さっそく申し込むと、米粉パンを展示してみませんかと誘われ、パンを持参しました。それが縁で新聞に掲載されると、見向きもされなかった米粉パンが売れはじめ、今は順調に伸びています。

 

夫婦二人三脚で

米粉の値段は小麦の約3倍、パンの価格も少し高いかもしれません。さらにできたてのパンはふわふわですが、時間が経つとご飯と同じで、硬くなってしまいます。「それが一番の難点だ」と美津子さんは話します。でも確実にリピーターが増えています。

大きなパン工場のように設備が整っているわけでもなく、室温も管理されていない小さな工房では、美津子さんが一つひとつの製造過程に工夫を凝らし、心を込めて丁寧に作り上げます。

また、孝夫さんは毎日「鳥の海ふれあい市場」でパンの対面販売をして、商品の説明をしたりお客さんの声を改善につなげる役割を担っています。こうした夫婦の連携が「あえり」の商品の質を高め、リピーターを生み出すのでしょう。

 

チャレンジと原点

美津子さんは「工房あえり」の原点である活き生き大賞を重んじて、毎年新しい商品を出品、米粉パスタや米粉プリンなどで6年連続の入賞を果たしています。

そしてまた、人との出会いをとても大事にしています。ですから、朝早い仕事にも関わらず、依頼されれば惜しみなく自分が身に付けた技術を広めています。

美津子さんに何歳まで工房を続けるのか質問すると、「産直市場では、七十歳代の人が目を輝かせて活躍しています。わたしもあと十年はやれるのかなと思っています。だんだん年を取ってくるので工房をこれ以上拡張することはできませんが、これからも体に良いパンを作り続けたいです」と語っていました。

一方孝夫さんは、「お客さんの顔を覚えるのが大変ですが毎日楽しくやっています。(美津子さんが)朝早く起きて一人でパンを作っている姿を見ていると健康が心配です。欲を出さず無理をし過ぎず、楽しくがんばってほしいです」と美津子さんを陰でしっかりと支えています。

Date 

佐藤 美津子(さとう みつこ)
昭和22年逢隈鹿島生まれ。
老舗菓子店や大手製パン会社(菓子部門)に勤務。孫の出産を機に家事・育児に専念する。
「工房あえり」の名前の由来は、孫の「あみさん」「えりさん」「良祐くん」の頭文字を取って「あ・え・り」にしたそうです。

工房あえり
  • 宮城県亘理郡亘理町字西郷221-1
  • TEL0223-34-3756

「おおくまふれあいセンター」と「鳥の海ふれあい市場」で販売。 

 

(広報わたり 平成21年9月号掲載)